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と、房一はほつとした面持になつて云つた。
「あのね、何ですよ――」
「おい、早く早く」
「さうです、一寸」
盛子のお腹では、もう胎動がはじまつていた。
「あなたの追鮎は元気らしいなあ」
「それで、何かね。ドイツ兵は徒歩てくで通るんかね」
が、材木置場の混乱にもかゝはらず、そこから一段と小高くなつている出張所の構内では、やはり高張提灯がかゝげられ、焚火が燃え、人が立つて歩いていたが、をかしい位にひつそりし、柵のところにかたまつた人影は下方の混乱を黙つて見物しているとしか見えなかつた。
「さうか、――そんなに何もかも、こつちでして貰つてもえゝか」
「あんたも、おめでたいさうで」
喜作は、
「ふむ」
房一の顔は重々しい沈思の表情と太い興奮の色とで紅黒く、やはり膏汗が漲つていた。